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- 2014年03月07日
- コラム
弁護士:久保井 聡明
「法の下の平等」に注目!
昨年出された最高裁の判決や決定のなかで社会の大きな注目を集めたものの1つに、民法900条第4号ただし書の規定のうち嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする部分(以下「本件規定」)が憲法14条1項の法の下の平等に違反するとした決定(平成25年9月4日大法廷決定、以下「本決定」)があげられます。
最高裁判所は、平成7年の大法廷決定以来、結論としては本件規定を合憲とする判断を示してきましたが、平成7年大法廷決定において既に、5名の裁判官が反対意見を述べたほかに、婚姻、親子ないし家族形態とこれに対する国民の意識の変化、更には国際的環境の変化を指摘して、本件規定の合理性が失われつつあるとの補足意見が述べられ、その後の小法廷判決などでも、同様の個別意見が繰り返し述べられていました。
このような流れのなか、本決定は、「昭和22年改正時から現在に至るまでの間の社会の動向、我が国における家族形態の多様化やこれに伴う国民の意識の変化、諸外国の立法のすう勢及び我が国が批准した条約の内容とこれに基づき設置された委員会からの指摘、嫡出子と嫡出でない子の区別に関わる法制等の変化、更にはこれまでの当審判例における度重なる問題の指摘等を総合的に考察すれば、家族という共同体の中における個人の尊重がより明確に認識されてきたことは明らかであるといえる。そして、法律婚という制度自体は我が国に定着しているとしても、上記のような認識の変化に伴い、上記制度の下で父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきているものということができる。以上を総合すれば、遅くともAの相続が開始した平成13年7月当時においては、立法府の裁量権を考慮しても、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていたというべきである。」と述べ、本件規定は、遅くとも平成13年7月当時において、憲法14条1項に違反していたものというべき、としました。
本決定の理由のなかで注目されるべき点を1つあげるとすれば、「子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず」という点であると思います。今後の法の下の平等を巡る裁判のなかでは、この「自ら選択ないし修正する余地のない事柄」か否か、という点がクローズアップされると思います。
昨年は法の下の平等を巡っては、ほかにも注目すべき判決や決定がありました。平成24年12月16日施行の衆議院議員総選挙の一票の格差について憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあった、とした平成25年11月20日最高裁大法廷決定は有名ですが、地方裁判所レベルまで広げると、地方公務員の配偶者が亡くなった場合、妻は年齢を問わず遺族補償年金を受け取れるのに夫は55才以上でないと受給できないのは「配偶者の性別で受給権を分ける差別的取扱いは合理性がない」として憲法14条に違反する、とした大阪地方裁判所平成25年11月25日判決などがあげられます。後者の判決は今後の上級審の判断が注目されますが、その判断如何によっては、企業のなかの様々な待遇規定の男女差などの問題へも波及する可能性があります。今後も「法の下の平等」に注目が必要です。