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トピックス/コラム詳細
- 2020年11月02日
- コラム
弁護士:久保井 聡明
久保井L⇔O通信20.10.1-10.8(国勢調査,ウーバーイーツ,日本学術会議,司法取引,不当表示セミナー,定期借家インターネット契約実証実験,GPSストーカー法改正へ)
45. 【国勢調査は国民の義務か】20.10.1
今,国勢調査が行われていますね。私も極力答えるようにしてきましたが,今回はじめてスマホから回答を行いました。便利になったものです。さて,国勢調査の連絡書類に,国勢調査は国民の義務です,というようなことが書かれています。その法的根拠を調べてみると,統計法にありました。実際に個人が罰則まで課された例はあまり聞いたことはありませんが,正確な統計は国の方針を決めるにあたっての基礎なので,このように法的義務とされているのでしょうね。
【統計法】
(報告義務)
第13条 行政機関の長は、第9条第1項の承認に基づいて基幹統計調査を行う場合には、基幹統計の作成のために必要な事項について、個人又は法人その他の団体に対し報告を求めることができる。
2 前項の規定により報告を求められた個人又は法人その他の団体は、これを拒み、又は虚偽の報告をしてはならない。
(罰則)
第61条 次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
一 第13条の規定に違反して、基幹統計調査の報告を拒み、又は虚偽の報告をした個人又は法人その他の団体(法人その他の団体にあっては、その役職員又は構成員として当該行為をした者)
46. 【ウーバーイーツの医療見舞金】20.10.2
コロナの感染が拡大して,街中で飲食宅配代行サービス「ウーバーイーツ」の自転車をよく見るようになりました。ところで,新聞報道によると,ウーバーイーツの運営会社は,自転車やバイクを使う配達員向けの補償を10月1日から拡充し,配達リクエストを受けた時から配達完了までに事故に遭った場合,配達員に支払う「医療見舞金」の上限を25万円から50万円に引き上げることにした,とのことです。ウーバーイーツの配達員は運営会社と「雇用関係のない個人事業主」で,労災保険が適用されないため,運営会社側は昨年10月,保険会社と協力し,最大25万円の医療費を補償するなどの仕組みを導入したものの,補償内容が不十分との声も出ていた,とのことで,今回の引き上げに至ったようです。
ただ,「雇用関係のない個人事業主」との法的見解がどこまで通用するのか,今後問われる可能性があると思います。
47. 【日本学術会議】20.10.5
日本学術会議から推薦を受けた会員候補者を内閣が任命しなかったことが大きな問題となっています。私も、今回はじめて、「日本学術会議法」という法律を見ました。以下、関係しそうな条文の抜粋です。内閣の所管,経費は国庫負担(1条)である一方,会議は独立して職務を行うとされ(3条),会員は会議の推薦に基づいて内閣総理大臣が任命する(7条2項),とされています。
【前文】
日本学術会議は、科学が文化国家の基礎であるという確信に立つて、科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与することを使命とし、ここに設立される。
【所轄・経費】
第1条 この法律により日本学術会議を設立し、この法律を日本学術会議法と称する。
2 日本学術会議は、内閣総理大臣の所轄とする。
3 日本学術会議に関する経費は、国庫の負担とする。
【目的】
第2条 日本学術会議は、わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的とする。
【職務】
第3条 日本学術会議は、独立して左の職務を行う。
一 科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること。
二 科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させること。
【会員の任命】
第7条 日本学術会議は、210人の日本学術会議会員(以下「会員」という。)をもつて、これを組織する。
2 会員は、第17条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する。
【会員の推薦】
第17条 日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする。
48. 【司法取引】20.10.6
日産自動車元会長、カルロス・ゴーン被告の報酬過少記載事件の公判で、検察側と司法取引して起訴を見送られた同社元秘書室長の証人尋問が行われています。報道によると今後,12月まで継続するとのことです。司法取引は2018年6月の導入後、少なくとも3件の適用例がありますが,「司法取引に合意した個人」が証人尋問に臨むのは初めてで,注目されています。司法取引の手続については,刑事訴訟法で詳細に定められていますが,自分が起訴されたくないために嘘の供述をする可能性があるのではないか,ということで,信用性を慎重に判断する必要があると言われています。
49. 【不当表示セミナーのご案内】20.10.7
さて,私も世話役を務めています日本CSR普及協会近畿支部が,11月16日午後3時~,ZOOMによるオンラインセミナーを行います。今回は,「不当表示規制に対する近時の動向~打消し表示の利用上の留意点を中心に~」とのテーマで,実務的な内容になっています。もしご興味のある方は,下記のサイトからお申込み下さい。よろしくお願いします。
https://www.jcsr-kinki.jp/seminar.html
50. 【定期建物賃貸借→インターネット契約実証実験】20.10.8
今回のコロナで,一気に日本のハンコ文化や紙文化が消滅してしまいそうな勢いです。(私は旧世代でどうしても紙で文章を読まないと頭に入ってこないのですが・・・)
この点,定期建物賃貸借契約について、インターネットで契約を完了できる実証実験が8月から始まっています。経産省のHPでは,次のとおり紹介されています。
「生産性向上特別措置法(平成30年6月6日施行)に基づき、新しい技術やビジネスモデルを用いた事業活動を促進するため、「新技術等実証制度」(いわゆる「規制のサンドボックス制度」)が創設されました。本制度は、参加者や期間を限定すること等により、既存の規制の適用を受けることなく、新しい技術等の実証を行うことができる環境を整えることで、迅速な実証を可能とするとともに、実証で得られた情報・資料を活用できるようにして、規制改革を推進する制度です。」「本実証計画では、借地借家法において、書面によってしなければならないこととされている定期建物賃貸借契約を、電子的な手段を用いて作成し印刷した書面を用いて行った場合でも、同法により保護される賃借人の利益が損なわれることがないかを実証します。」
経産省HP
https://www.meti.go.jp/press/2020/08/20200806002/20200806002.html
51. 【GPSストーカー規制の法改正へ向けて議論へ】20.10.9
(昨日,定期借家契約について,書面によらないインターネットによる契約の実証実験について配信しましたが,今朝の日経朝刊1面は,「薬剤師常駐や不動産売買 書面・対面撤廃へ工程表 政府、4段階で検討」 ,でした。思ったより早く進むかもしれません)
さて,オンライン通信9(20.8.3・GPSと「見張り」最高裁判決)で,最高裁が、2020年7月30日、全地球測位システム(GPS)の機器を相手の車に勝手に取り付けて居場所を把握するのが,ストーカー規制法の禁じる「見張り」に当たるかどうかが争点となった2事件の上告審判決で、「見張り」に該当しない、との初判断を示したことをご紹介した際,「罪刑法定主義」から無罪となったけれども,「GPSを取り付けて居場所を把握することも、本来は許されるべきことではありませんから、今度は、国会がちゃんと法律改正をして役割を果たす番です。 」と書きました。
この点,今日の日経新聞では,警察庁が,「9日からは法律の専門家らを交えた検討会を開き、GPSを悪用したストーカー行為の法規制について法改正も視野に入れた議論を始める。」と報道しています。実態に即した法改正がなされることを望みたいと思います。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO64791940Y0A001C2CR8000/