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トピックス/コラム詳細
- 2020年08月17日
- コラム
弁護士:久保井 聡明
久保井L⇔O通信8.3-13(9.GPSと「見張り」,10.レジ袋7割辞退,11.臨時国会召集請求,12.IT重説,13.AIと独禁法,14.会計不正急増,15.セミナー案内,16.GOTOトラベルと旅館業法)
9.【GPSと「見張り」最高裁判決】20.8.3
今日は新聞でも報道されていた刑事事件の最高裁判決です。
(1)最高裁第1小法廷(山口厚裁判長)は、7月30日、全地球測位システム(GPS)の機器を相手の車に勝手に取り付けて居場所を把握するのが,ストーカー規制法の禁じる「見張り」に当たるかどうかが争点となった2事件の上告審判決で、「見張り」に該当しない、との初判断を示しました。下記、最高裁HPのURLです(判決全文)。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/611/089611_hanrei.pdf
(2)もしかすると、一般の方は、「何で?おかしいんじゃないの?」と思われるかもしれません。ただ、ストーカー規制法2条1項1号は,好意の感情等を抱いている対象である特定の者等に対し,「住居,勤務先,学校その他その通常所在する場所(住居等)の付近において見張り」をする行為について規定しています。そうすると、条文上、「住居等」の付近という一定の場所において、特定の者の動静を観察する行為が行われることが必要であり、GPSの機器を相手の車に勝手に取り付けて居場所を把握するのは、一定の場所で「見張り」をしていたものとはならない、と判断したものです。
(3)杓子定規に思われるかもしれませんが、刑罰を国家が科すには、「罪刑法定主義」が厳格に適用されます。裁判所が、条文を離れて類推適用をして刑罰を科してしまうと、予想もしなかったようなことで刑罰を科されてしまうおそれがあります。裁判所は本来の役割を果たした,と言えると思います。もちろん、GPSを取り付けて居場所を把握することも、本来は許されるべきことではありませんから、今度は、国会がちゃんと法律改正をして役割を果たす番です。
10.【レジ袋辞退7割超】20.8.4
今日の日経新聞に,7月1日からのレジ袋有料化でコンビニ各社でレジ袋辞退が7割超になった,という報道がされていました。やはり効果があるものですね。法律的には,容器包装リサイクル法の省令改正で義務化されたもの,です。
以下,経産省のHPです。
https://www.meti.go.jp/policy/recycle/plasticbag/plasticbag_top.html
11.【臨時国会召集請求】20.8.5
今日の新聞各紙で,野党側の臨時国会の召集要求に応じないのは憲法53条に違反するとして、岡山の弁護士らが、政府に召集を命じるよう求める裁判を東京地裁に起こす方針を明らかにした,と報道されています。
憲法53条の条文は下記のとおりです。「内閣は,その召集を決定しなければならない」とあります(野党の主張)。他方で,「いつまでに」ということが書かれていません(与党の主張)。(★なお,この通信では,あくまでも法律情報を提供する,という趣旨ですので,いずれが正しいと思うかは,みなさんでそれぞれお考えいただければ,と思います)
憲法第五十三条 (臨時会)
内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。
12.【ITによる重要事項説明】20.8.6
今日の日経新聞(2020.8.6・1面)に,「新型コロナウイルスの感染問題で人との接触を避ける動きが広がるなか、対面を前提としてきた販売や営業の遠隔実施に企業が取り組み始めた。」という記事があります。記事の最後に,「課題はデジタル時代を想定しない古い法律だ。不動産では、宅地建物取引業法で契約内容などの重要事項について対面説明を義務付けている。マンション販売をすべて遠隔対応にするには法改正などが必要だ。」とありました。
この点,宅建業法35条1項では,重要事項説明について,「書面を交付して説明」が必要としており,対面が前提とされています。
ただ,賃貸借の代理,媒介については一部緩和されていて,一定の条件のもとテレビ会議などによる重要事項説明も可能,とされています。下記,国交省の「賃貸取引に係るITを活用した重要事項説明実施マニュアル概要・平成29年9月」です。
https://www.mlit.go.jp/common/001202497.pdf
13.【AIと独禁法】20.8.7
今日の日経新聞に,「公正取引委員会は人工知能(AI)やアルゴリズム(計算手法)といったデジタル技術でカルテルなどが起きた際に独占禁止法で対応する。人間の意志と関係なく価格を調整した場合に違反になるのかなどが焦点となる。実質的な運用ルールとなる法解釈を示した報告書を2020年度内にまとめる。」との興味深い記事がありました。
同じような価格をはじき出すAIを業界団体が一斉に導入すると,どうなるのでしょうか。
14.【会計不正急増】20.8.11
昨日(8月10日)の日経新聞朝刊に、「国内企業の会計不正が急増している。日本公認会計士協会によると、2020年3月期は101件と前の期から7割増え、5年前の3倍だった。このうち大半が上場企業のようだ。損益や財務を実態よりよく見せようとする動きが目立つ。
15年の企業統治指針導入で社外取締役の採用拡充など経営監視の体制作りは進んだが、実効性にはなお課題がありそうだ。」との記事がありました。
下記、公認会計士協会の報告書です。具体的なケースが紹介されていて、参考になります。
https://jicpa.or.jp/specialized_field/files/2-3-5-2-20200715.pdf
15.【久保井LO・オンラインセミナー・コロナと労務問題】20.8.12
久保井総合法律事務所では事務所の入っている中ノ島ビルの地下会議室で定期的にセミナーを開催してきましたが,新型コロナの影響で実開催が難しい状況になっています。そこで,今回,初めてZOOMによるオンラインセミナーを企画しています。ZOOMミーティングの定員が100名で,あと20名くらいの方にご参加頂ける状況です。もしご興味ある方は,8月20日(木)までに,添付ファイルをご覧頂きお申込み下さい。
【セミナー概要】
日 時 令和2年8月26日(水)午後3時30分~5時00分
方 法 Webにより実施(Zoomを予定)
テーマ 「新型コロナウイルスの労務対応~第2波,第3波を見据えて~」
講 師 弁護士 船山 敦生(久保井総合法律事務所)
セッション 弁護士 久保井聡明
参加費 無料
16.【GoToトラベルと旅館業法】20.8.17
みなさま、「新たな生活様式」のもとでのお盆をどうお過ごしだったでしょうか。もしかするとGoToトラベル利用された方もおられるかもしれません。
さて,8月14日の毎日新聞朝刊に、「新型コロナウイルス感染が再拡大する中、検温などの感染防止策を徹底することを条件に始まった政府の旅行需要喚起策『Go Toトラベル』。そこに、思わぬ法律の壁が立ちはだかっている。発熱など健康上の理由で宿泊を拒むことを禁じる旅館業法だ。安心安全を求めて実施する感染防止策も法律に抵触する可能性があるため、旅館業界が苦慮している。」との記事がありました。
旅館業法5条には、次の定めがあります。検温で37.5度あったとしても、新型コロナに感染していると明らかに認められる、とは言えない、というジレンマがあるようです。やはり,国会で議論すべきことは少なくない?
【旅館業法】
「第五条 営業者は、左の各号の一に該当する場合を除いては、宿泊を拒んではならない。
一 宿泊しようとする者が伝染性の疾病にかかつていると明らかに認められるとき。
二 宿泊しようとする者がとばく、その他の違法行為又は風紀を乱す行為をする虞があると認められるとき。