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トピックス/コラム詳細
- 2021年12月27日
- コラム
弁護士:久保井 聡明
久保井L⇔O通信21.12.7-12.27(腕相撲大会で労災、鉄道カスハラ、倒産手続もIT化、米、ウイグル産禁輸法の成立)
185. 【腕相撲大会で労災】21.12.7
さて、21.12.2の読売新聞の記事によると、サクランボ収穫前の職場の決起大会で腕相撲をして右肘を骨折した山形県西川町の男性が、けがは「業務上の負傷」にあたるとして、療養補償と休業補償を不支給とした国の処分の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が12月2日に仙台高裁であり、請求を棄却した1審・山形地裁判決を取り消して、「業務上の負傷」と認める判決をくだした、ということです。
同記事によりますと、判決は、腕相撲が「決起大会への参加と一体の会社の業務として、社長の指示に従って遂行した行為」と認めて「業務上の負傷」と認めた、ということでした。詳しく事案がわかりませんが、参加者メンバー、参加人数、開催場所、開催時間などから、実態として、腕相撲大会への参加が社員に義務付けられているような状況にあった、ということなのかな、と思います。
この点、業務上災害の解説をした東京労働局のHPのURL、ご参考までに貼り付けておきます。
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/rousai_hoken/ro-gyoum.html
186. 【鉄道などでのカスハラ】21.12.13
さて、21.12.11の日経新聞に、鉄道やタクシーなど交通や物流業界の労働組合でつくる「全日本交通運輸産業労組協議会(交運労協)」が組合員約2万人に調査した結果、直近の2年間で46.6%が顧客からの嫌がらせ「カスタマーハラスメント」(カスハラ)に遭った経験があると答えたと発表した、とのことです。下記、調査結果が掲載されているHPです。
http://www.koun-itf.jp/publics/index/1/detail=1/c_id=227/page227=1/type014_227_limit=20/#page1_227_7
コロナになってからカスハラが増えたという回答が多いようです。また、加害者の年代、どのようなハラスメントが多いかなど、色々考えさせられる内容になっています。どうしても、「お客様は神様」的な発想から、少々の無理を言われても我慢して耐える、という対応をしがちですが、悪質なケースでは、警察や弁護士に相談をして毅然とした対応をすることも必要です。
187. 【倒産手続もIT化の方向】21.12.20
さて、民事裁判手続についてはすでに一部でIT化が試行されています。特にコロナの感染が拡大してからは、裁判所、弁護士ともWeb会議システムを利用した裁判の有用性に「気付き」、急速に進みつつあります。刑事手続についてもIT化の検討が始まりました。この点、21.12.16の日経新聞の報道などによると、政府は12月15日に示したデジタル化の実現に向けた重点計画案で、企業の倒産手続きでなどのIT化(例えば、債権者からオンラインで債権の届け出を受けられる体制などを整備等)について、2023年度にも試行を始める方針を盛り込んだ、とのことです。このほかにも、仮処分などの民事保全、差押えなどの民事執行、離婚や相続などの家事事件もIT化の対象に加えた、とのことです。
(2)このなかで、多くの債権者がいる倒産手続などは、IT化のメリットが大きいと思われます。この点に関連しては、bcc通信148(21.6.4)「ビットコイン民事再生/オンライン投票へ」で下記の配信をさせていただいたところです。
【bcc通信148】
昨日(21.6.3)の日経新聞で、「2014年に経営破綻した暗号資産(仮想通貨)交換業者マウントゴックスの民事再生手続きが新たな段階を迎えた。再生管財人が5月31日に再生計画案に対するオンライン投票システムを公表。ビットコイン価格が急騰したことで返還原資は確保されており、計画案が可決されれば、約3万5000人の債権者にとっては債権額の大半が返ってくることになりそうだ。」との報道がされています。債権額の大半が返ってくるというのも異例ですが、オンライン投票というのも異例ですね。報道によると、「世界中に債権者が散らばっており、東京地裁と弁護士が協議してオンラインによる投票システムを認めることになった」とのことです。民事裁判IT化に続いて、破産や執行、保全などのIT化も今後検討されることになっていきますが、その先駆けになるかもしれまん。
(3)また、民事裁判がIT化され、その前段階の民事保全や、後段階の民事執行もITかされれば、各手続の間の移行や連携がスムーズになり、かなりの時間的短縮がはかれるのでは、と感じます。ただ私自身もWeb会議の有用性を感じてはいますが、どうしても準備書面や証拠は紙で印刷して色々書き込みをしながらでないと頭に入ってきません。全面的に移行していくのであれば、徐々に慣れていく必要があると感じる今日この頃です。
188. 【米、ウイグル産禁輸法の成立】21.12.27
さて、21.12.25の日経新聞に、「米国で23日、強制労働を理由に中国の新疆ウイグル自治区からの輸入を原則禁じる法律が成立した。今後、運用規則などを整備し2022年6月下旬に施行する。専門家からは日本企業の対応について「供給網の精査や調達先の見直しが急務だ」との指摘が上がる。中国からの報復措置にも配慮した慎重な対応が求められる。」との記事がありました。
(2)近時、「ビジネスと人権」に対する注目が大きくなっています。自社の労働環境やコンプライアンスを向上させることは勿論ですが、サプライチェーン全体に目を配らなければならない、となると、「言うは易し、行うは難し」、です。海外生産の場合、実際に生産している工場を特定するだけでも難しい、という事情もあります。しかも、(1)の記事にあるように、「中国からの報復措置 にも配慮した慎重な対応」となると…。いずれにしろ、記事の解説にあるよう に、「サプライチェーン全体の中からリスクが高いと見込まれる分野を集中的に調べ、現地の調査記録なども残すことが重要」ということになるのでしょうね。 私たち弁護士も、このあたり、企業法務のご相談を受けるにあたって認識を新たにしておかねば、と感じました。
(3)早いもので今年も残すところあとわずか、1年間、大変お世話になりました。今回が今年最後のbccとなります。オミクロン株が心配な状況になってきましたが、みなさま、お元気で年末年始をお迎えください。また、久保井総合法律事務所を来年もよろしくお願いします。