久保井L⇔O通信22.5.2-5.25(改正個人情報保護法実態調査,公益通報セミナー,定期借家等電子化OKに,誤振込みと自治体債権) – 久保井総合法律事務所

トピックス/コラム一覧

トピックス/コラム一覧

トップページ   >   トピックス/コラム   >   久保井L⇔O通信22.5.2-5.25(改正個人情報保護法実態調査,公益通報セミナー,定期借家等電子化OKに,誤振込みと自治体債権)

トピックス/コラム詳細

2022年06月01日
コラム

弁護士:久保井 聡明

久保井L⇔O通信22.5.2-5.25(改正個人情報保護法実態調査,公益通報セミナー,定期借家等電子化OKに,誤振込みと自治体債権)

208. 【改正個人情報対応の法人実態調査】22.5.2
さて,日経新聞(22.4.29)に,「企業や団体など国内の3割の事業者が,過去1年以内に個人情報流出の問題を起こしている実態が情報セキュリティー大手のトレンドマイクロの調べで明らかになった。4月に改正個人情報保護法が施行され,個人情報漏洩時の報告の義務化が追加されたが,調査では3月時点で2割以上の回答者が実態を把握していないと答えた。」との報道がされていました。

(2)もとの実態調査をインターネットで調べてみたところ,下記の同社のプレスリリースがありました。
https://www.trendmicro.com/ja_jp/about/press-release/2022/pr-20220330-01.html

(3)この実態調査を見ると,次のような点が書かれていました(以下,HPからの引用です。)。

①個人情報流出の原因
「従業員や委託先による不慮の事故(送信ミスなど)」が49.0%で最多
「従業員や委託先による故意の犯行(内部犯)」が39.1%
「外部からのサイバー攻撃」が32.5%
⇒内外問わず不正な目的をもったサイバー犯罪者による情報漏洩が発生している実情が明らかに

②個人情報漏えい時の個人情報保護委員会への報告義務について
改正個人情報保護法では,個人情報漏洩が起こった場合,個人情報保護委員会への報告や本人への通知が義務化
⇒この義務化について,把握しているか聞いたところ23.1%が義務化を把握できていなかったと回答

③個人情報へのアクセス権限の付与
「(個人情報が保存されているサーバへの適切な)アクセス権限の付与」を行っている割合は54.8%と約半数の法人組織が対応ができていない状況

④委託先の個人情報保護管理体制の監査
企業は委託先での個人情報漏洩についても監督責任が発生するため,委託先に対して個人情報の管理状況を監査する必要
⇒「すべての委託先の個人情報の管理体制について監査を実施している」と答えた割合は53.0%に留まる

(4)個人情報保護法の改正は4月1日に施行されましたが,今からでも遅くはありません。久保井事務所でも,★個人情報保護法改正についての研修をさせて頂いています。もし,そのようなご依頼がありましたら,ご一報ください。

 

209. 【公益通報者保護法セミナーします】22.5.9
さて,すでにご案内させて頂いていますが,下記のとおり,久保井事務所の第27回のリーガルセミナーをオンラインで行います。現在の申込み状況によりますと,もう少し参加受入れ可能のようです。★もしご参加希望の方は,下記の要領に従ってお申込み下さい。よろしくお願いします。

【セミナーの内容】
日 時 令和4年5月24日(火)午後4時00分~5時30分
方 法 Webにより実施(Zoomを予定)
テーマ 「6 月1 日施行の改正公益通報者保護法の実務上のポイント」
★当日は国から出されている「指針」及び「指針の解説」を踏まえ,従事者指定義務や体制整備義務への対応を中心にお話しする予定です。

講師 弁護士 久保井聡明
セッション担当 弁護士 松本智子
参加費 無 料

 

210. 【定期借家,一般事業用定期借地‐電磁的記録も書面と同様に】22.5.19
さて,bcc通信200(2022.3.22)で定期借家,一般定期借地契約のデジタル化についてご紹介しました。bcc通信200の時点では改正法の条文をご紹介していましたが,法務省が改正法の概要についてわかりやすく説明したものをアップしていましたので,ご紹介します。事業用定期借地については対象外で従来と同様に公正証書が必要という点は,ご注意,です。

https://www.moj.go.jp/content/001372507.pdf

(2)世の中のIT化の流れは法律改正の世界でも急ピッチです。今日の新聞各紙でも,民事裁判IT化の法案が昨日成立した,と大きく報じられています。また,光もあれば影もある,ということで,ネット上の誹謗中傷が大きな問題になり,これに伴って,侮辱罪の厳罰化の改正も成立しました。このあたりは,またおいおい,bcc通信で紹介していきたいと思います。

 

211. 【誤振込みと自治体の債権】22.5.25
さて,最近,山口県阿武町の4630万円のご振込みが話題になっています。被疑者によると,ネットカジノで全額すった,というはずが,決済代行会社3社から4292万円が振り込まれた,と報道されています。実際のところどのような手続をとったのか,なぜ決済代行会社が振り込んできたのか,もう少し色々な事実関係が分からないと確たることはいえません。

(2)ただ,報道によると,町は被疑者が滞納していた税金で差押えをした,ということは確実なようです。この点,地方自治体の持っている金銭債権には,大きく分けると強制徴収ができる公債権と,強制徴収ができない私債権があります (厳密には強制徴収できない公債権もありますが,ここでは省略)。

(3)では,ここで書いた,「強制徴収ができる」とはどういうことでしょうか?例えば,私企業がお金を貸していて,借主が返還してくれない場合,最終的には裁判所に訴訟を提起して判決をもらって,その判決に基づいて改めて裁判所に執行文の付与や差押え申立てなどをしないといけませんよね。

これに対して,自治体の持っている債権のうち,例えば,税金債権であるとか,国民健康保険の保険料債権だとか,下水道料金債権だとかは,裁判所に訴訟を提起して判決をもらうなどの手続を行わなくても,滞納があれば差押えなどをしていくことができる,とされています。これが,「強制徴収ができる」ということの意味です。ただ,自治体の持っている債権全てが「強制徴収ができる」というわけではありません。自治体が住民に貸付けをしている場合,公益住宅の家賃の債権,あと今回のように誤振込みにともなって発生する不当利得返還請求権などは,民間と同じように裁判所の手続を踏まないと,差押えなどができない,とされています。

(4)今回,滞納していた税金で差押えた,というのは,4630万円の不当利得返還請求権という,強制徴収ができない債権で手続を踏むよりも,即座に手続を進めることができる,ということで選択したように思われます。

とは言っても,税金をそんなに多額の滞納しているとは思えず,法律的に純粋に考えると,国税徴収法で,(差し押える債権の範囲)について,「第63条 徴収職員は,債権を差し押えるときは,その全額を差し押えなければならない。ただし,その全額を差し押える必要がないと認めるときは,その一部を差し押えることができる。」とされているとはいえ,かなりのウルトラCに感じます。

今後,税金の差押えで得たお金はそのまま不当利得返還請求権に充当することはできず,別途の手続が必要になります。