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トピックス/コラム詳細
- 2020年12月22日
- コラム
弁護士:久保井 聡明
久保井L⇔O通信20.10.29-11.5(定年後再雇用基本給大幅減額は不合理判決,自然債務整理ガイドラインをコロナ適用,オンライン文化祭と著作権法,郵便投票,日本では?)
62. 【定年後再雇用基本給大幅減額は不合理との判決】20.10.29
本日の新聞各紙に,定年後の再雇用で基本給を大幅に減額したことが旧労働契約法20条の同一労働同一賃金(均衡待遇)に反し不合理である,という名古屋地方裁判所の判決が出された,と大きく報道されています。同一労働同一賃金については,最高裁が今月,5件判決を出し,大きく報道されていますが,あくまでも具体的事例毎の判断です。今回の判決が,今後,控訴などされた場合,どのように判断されるか,注目ですね。
【日経新聞から一部引用】
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO65583810Y0A021C2CC1000/
定年後再雇用者の基本給減額の是非が争われた訴訟の判決で、名古屋地裁は28日、同じ仕事なのに基本給が定年前の6割を下回るのは不合理な待遇格差に当たると認め、名古屋自動車学校(名古屋市)に未払い賃金分の支払いを命じた。高齢者雇用が推進される中、他企業の賃金制度に影響を与える可能性がある。
再雇用者の基本給について、企業に正社員との格差是正を求める判決は全国初とみられる。
判決によると、訴えを起こしたのは名古屋市に住む男性2人。それぞれ2013~14年に定年を迎えた後に再雇用を希望し、65歳まで嘱託職員として技能講習や高齢者教習を担当した。仕事の内容や責任の範囲は定年前と変わらない一方、基本給は定年前の月額16万~18万円から7万~8万円ほどに下がった。
井上泰人裁判長は「年功的性格があることから将来の増額に備えて金額が抑制される若い正社員の基本給すら下回っており、生活保障の観点からも看過しがたい水準に達している」と述べた。
再雇用の際に賃金に関する労使の合意がなかった点も挙げ、定年前の基本給の6割を下回るのは不合理な待遇格差に当たると結論づけた。
63. 【久保井事務所Webセミナー同一労働同一賃金案内】20.10.30
さて,久保井総合法律事務所のリーガルセミナーを下記のとおり予定しています。ZOOMによるウェブセミナーで,定員までもう少しだけ余裕があります。もしご興味がある方は,お申込み下さい。よろしくお願いします。
※久保井総合法律事務所ウェブセミナーの内容
【日時】11月10日(火)午後4時~5時30分頃まで
【方法】ZOOMによるウェブセミナー
【テーマ】同一労働同一賃金の5件の最高裁判決と実務対応
【講師】弁護士久保井聡明
【セッション担当】弁護士今村峰夫
64. 【自然災害債務整理ガイドライン→コロナにも適用へ】20.11.2
金融庁や全国銀行協会などが、10月30日、新型コロナウイルスの影響で収入が減って困窮する個人や個人事業主の債務を減額・免除する特例措置を設けると発表した、との報道がされました。自己破産などの法的措置によらず、特定調停手続を活用して、生活や事業を再建できる手段を整える、ということで、具体的には、大規模な自然災害の被災者の返済負担を軽くするための「自然災害債務整理ガイドライン」をコロナ禍にも適用し、今般、コロナ用のガイドラインの特則も作られました。下記、ガイドラインの特則などを紹介するHPです。今後、冬に向けて第2波、第3波が大きくなった際、多くの方の生活再建に活用される可能性があると思います。
http://www.dgl.or.jp/covid19/
(あと,余談ですが,昨日,いわゆる大阪都構想が,2015年の1回目に続き,2回目の住民投票でも反対多数で否決されました。私も大阪市民で,昨日,投票に行きました。投票用紙は,「大阪市廃止・特別区設置に対して」とあり,自分で,「賛成」か「反対」を記載する様式になっていました。前回は,投票用紙に「大阪市廃止」という文言はなく,単に「特別区設置」に「賛成」か「反対」かを記載する方式だったところ,2018年5月に大学教授らが明記を求める陳情書を市議会に提出。同月に賛成多数で採択されていた,ということのようです。ギリギリの票数でしたので,案外,この点が大きかったかもしれません。)
65. 【オンライン文化祭,著作権法の壁?】20.11.4
昨日の文化の日(11月3日)の朝日新聞に、「ダンス部員がリズミカルに動きをそろえているのに音楽は流れない――。コロナ禍で広がった「オンライン文化祭」の動画配信で、こんな異変が起きている。なぜ?」という興味深い記事が掲載されていました。コロナのもと、中学生や高校生が文化祭の様子を動画配信するにあたって、著作権法の壁で音楽を消さざるを得ない、という内容です。
【朝日新聞】
https://www.asahi.com/articles/DA3S14681521.html
著作権法38条1項本文では、「公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口授することができる」とされており、著作権者の許可を得ずに、文化祭において学内で演奏したり、CDの楽曲を使うことは可能です。他方、オンラインで動画配信するとなると、著作権法23条1項の公衆送信権(著作者は、その著作物について、公衆送信を行う権利を専有する)があるため、許可を取ることが必要となります。
この点について、学校現場でICTを活用してより充実した教育を行うことができるように、2018年に著作権法が改正されましたが(35条)、主に想定されているのが、「学校等の授業や予習・復習用に、教師が他人の著作物を用いて作成した教材をネットワークを通じて生徒の端末に送信する行為等について、許諾なく行えるようにする」というもののようで、外部の方も視聴可能なオンライン文化祭の動画配信に適用するのには壁があるようです(※35条1項ただし書)。
著作権者の権利と教育の充実をどう折り合いをつけていくか、今後も引き続け検討が必要ですね。
【著作権法】
(学校その他の教育機関における複製等)
第35条 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における利用に供することを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、公表された著作物を複製し、若しくは公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。以下この条において同じ。)を行い、又は公表された著作物であつて公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該複製の部数及び当該複製、公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
2 前項の規定により公衆送信を行う場合には、同項の教育機関を設置する者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。
3 前項の規定は、公表された著作物について、第一項の教育機関における授業の過程において、当該授業を直接受ける者に対して当該著作物をその原作品若しくは複製物を提供し、若しくは提示して利用する場合又は当該著作物を第三十八条第一項の規定により上演し、演奏し、上映し、若しくは口述して利用する場合において、当該授業が行われる場所以外の場所において当該授業を同時に受ける者に対して公衆送信を行うときには、適用しない。
66. 【郵便投票→日本では?】20.11.5
アメリカ大統領選挙で郵便投票が話題になっていますね。この点,日本では郵便投票は認められていません。ただ,在外投票について,ごく一部,郵便等による投票,という制度があります。
(それにしてもアメリカの選挙は,エキサイティングですね。無茶苦茶だな,と思う一方,粛々と新しい首相が決まる日本から見ると,ある意味,うらやましく感じてしまうのは私だけでしょうか)
【公職選挙法】
(投票所における投票)
第四十四条 選挙人は、選挙の当日、自ら投票所に行き、投票をしなければならない。
(在外投票等)
第四十九条の二 在外選挙人名簿に登録されている選挙人(当該選挙人のうち選挙人名簿に登録されているもので政令で定めるものを除く。以下この条において同じ。)で、衆議院議員又は参議院議員の選挙において投票をしようとするものの投票については、第四十八条の二第一項及び前条第一項の規定によるほか、政令で定めるところにより、第四十四条、第四十五条第一項、第四十六条第一項から第三項まで、第四十八条及び次条の規定にかかわらず、次の各号に掲げるいずれかの方法により行わせることができる。
一 (省略)
二 当該選挙人の現在する場所において投票用紙に投票の記載をし、これを郵便等により送付する方法